なんとなく、最近氷河期世代が話題になってます。
氷河期世代は100社200社面接あたりまえ、やっと入っても地獄のような仕事しかなかっただの、今の奴らに比べて何十倍努力しても少しも報われなかった。非正規になるしかなくて結局国に捨てられた!!!など・・・・。
こういう話を聞きますと、氷河期世代まっただなかの世代のわたくしとしては「えっ!?」ってなるんですよね。
なぜかというと、わたくしはこのような過酷な就職活動には全く縁がなく、それなりに安定した職で安定した収入でのんびり暮らせているからです。
べつに氷河期世代は大げさとか、盛って騒いで見苦しいとか言いたいわけではなくて、そもそもなんか根本的にずれてるんじゃないかと思っています。同じ世代の中でも。
なにかちょっと参考になるのではないかと思うところもあり、自分の氷河期世代まっただなかのころを書いてみようと思います。
1:いきさつ
そもそも論なのですが、わたくしはそもそもまともに就職する気がまったくありませんでした。なぜならかなり無気力かつ本格的なパンクロッカーだったからです。大学4年の秋まで髪は血のような色に染めていました。働く気が微塵もなく、母親が絶望のあまり「大学出ても働かないならもう死ね!!」と叫ぶので、しょうがなく大学4年の冬に就職課に貼ってあった求人を受けに行きました。サラ金です。一発でうかりました。みなさんはナニワ金融道って知ってますかね。ああいうかんじのとこ。
ほんとどうでもよかったんですよね。行ってた大学も九州の私大で、レベルでいえば日東駒専くらい。今は知らないですけど当時はまともな企業からは速攻お断りされるレベルでしたし。
ナニワ金融道を読みつつ、「俺も取り立てとかするのかー。お金返せないリーマンを追い込んだり、女の子を風俗に落としたりするのかー」と考えていたら思いもよらないことが起きました。留年です。単位足りてたはずでした。数は。必修いっこ取ってなかったことが発覚したのです。
サラ金にいく話はなくなりました。母親は泣き叫んで大学辞めて何でもしろ乞食でもなんでもいいから自分で食っていけもう知らんといいましたが、父親がとてもやさしくて学費を払ってやってくれ、俺の小遣いはいらないからと宣言してくれたため学費だけははらってもらえることになりました。そのため今に至るまで父親は小遣い無しです。さすがに申し訳ないのでいまでも父親のお小遣いだけは仕送りしています。
さて、必修1単位だけを受けないといけないわけですが、週に1回1時間です。週休6日なわけです。ただ親もそのへんはよくわかっていて仕送りを激減させましたので、働かないといけません。学生課になんかいいバイト無いでしょうかと相談したところ、付属の大学病院を紹介されました。
当時、病院はまだIT化が進んでいませんでした。かろうじてレセプト(保険請求)がIT化されつつあったレベルというところで、院内にも大量の紙がとびかっていたわけですが、何のバイトかというと、この紙のレセプトを医療事務がつくったりするのを新しく入ったレセコンに入力したりする・・・という仕事だったんですね。
半期半年これをしてたんですけど、おかげさまで医療の保険請求の仕組みをかなりしっかりと覚えることができました。併せてまだあんまり普及していなかったレセコンというシステムを触れるようになりました。これは後から思わぬ形で活きてくることになります。
大学を卒業したのは9月でした。アメリカの学生みたいに夏卒業です。また就職課にいって人気なさそうな求人(不動産屋)にいきました。一発でうかりました。100社200社受けても―っていう話ありますけどね、あれは人気あるところとか、ふつうの総合職とかとにかくちゃんとしたところ受けようとしたからだと思います。地方の人気ないブラック不動産屋なんて一発ですよ一発。
3か月後、ブラックゆえでしょうか、社長の息子がめちゃくちゃな経営をしたおかげで会社が倒産しました。
潰れた翌日、求人誌みてたら、「医療系商社 ITに詳しい方募集」っていう求人があったんですね。当時の医療ITのレベルなんてほんと黎明期で、自分みたいな半年病院でレセコン触りましたみたいなやつでも戦力として椅子があったんですよ。いなかったんですね、パソコンある程度わかって、医療会計さわりだけでもわかるみたいなひと。当時ってパソコンって触ってるだけでオタクって思われてましたし。自分の地元なんて、パソコン好きっていっただけで近所のよくわかってないやつに宮崎勉(ロリコンオタクの犯罪者で幼女誘拐殺人した人です)みたいになるんじゃないかとかいわれたくらいです。イケてるやつはパソコンなんか触らない!!!っていう空気がそれはもうはっきりとありました。
受けたらこれも一発でした。面接スキルがあったわけじゃなく、面接で社長と話したら同郷だったからです。地元トークして盛り上がったら明日から来いといわれて決まりました。
そこから23年つとめているわけで、当時はろくな人材がこなかった(そもそもそんな分野に来てるやつ自体が少なかった)医療IT業界はいまはもうずいぶん立派な業界になりました。世の中の大半の就活生は見向きもしなかったであろう椅子でしたが、今見るとずいぶん立派な椅子になってます。給料も当時から結構よかった。需要あるのに人がこないから。会社も立派になりました。社員も1000人近くいますしね。大企業といっても差し支えない感じです。
なので、ほんと嘘じゃないのです。コネもないし、学歴もないけどふつーに就職してふつーに給料出て、収入もわるくないの。氷河期世代は努力しても報われなかった!!!!なにをやってもだめだった!!!非正規になるしかなかった!!!みたいなのまったくなかったんです。だいたい自分の場合だと非正規の書類選考すら落ちましたからね。無理って言われました。留年だと。
2:これから
さて、ここから考えると、氷河期世代によく言われてる
慶応早稲田でも200社300社受けても云々
国立大出ても非正規しかなかった云々
みたいなの、ちょっとなんか抵抗あるんですよね。いやな言い方なんだけど、あえて同世代だから言うんだけど、当時なぜ求人すくなかったかって、団塊世代が60代間近で、求人絞らないとこやつらの人件費払えないからっていうのが大きかったんですよね。
要は、ふつうの総合職はぱんぱんにうまってて椅子がなかったっていうことです。
無い椅子に殺到すりゃそりゃ職はないですよ。世の中信じすぎ。学校でも「真面目に言うこと聞いて高校出て大学いって大企業いったら一生安泰」みたいなのすーっと信じてるんだもの。わたくしはパンクロッカーなのでこんなんはなからバカにしてました。ぜったいやだと思ってたし、なんならシドヴィシャスみたいに20台で死ぬんだと思ってた。今考えても、そういう雰囲気とかほんと嫌だった。言い方悪いけど、ほんと思ってた「バカみたい」って。つまんねー世の中だなって。ずいぶん刺激的に変わってくれてほんとありがたいですよ。批判覚悟でいいますけど今の世の中の方が絶対いい。バブルとかの時代より。
小泉改革でーとか、派遣解禁で―とかいうけど、なんでそんなにお国の政策とかあてにするのかがそもそもわかんない。年寄りが一番多いんだし、選挙にもそいつらしかこないんだからそいつらの方しか見てないよそんなん。なんであてにすんの。
あと、パソコンをはじめとするIT系に対して、すごい世の中の空気が冷たかったです。自分は初めてパソコンさわったのが9歳とか10歳のころでしたけど、そのころ本当にびっくりしたんですね。何でもできるじゃんって思った。プログラム書けたらなんでも作れる!!もっともっと性能があがっていったら、この箱の中になんでもできる!!!ってびっくりしたんです。
ところが、世の中の雰囲気ってぜんぜんそうじゃなかった。パソコン?そんなのオタクが触るもんでしょwwwってあきらかにバカにしてた。当時はインターネットもスマフォもないので、トレンドは全部テレビがつくるわけです。
当時のトレンドは「パソコンなんてオタクがさわるもの。オタクは犯罪者予備軍のきもちわるいやつら。イケてる俺らはそんなの触らないよ?学校でもうまくやって中学高校ではスポーツして、大学いったらサークル入ってあっちこっちで男女くっついたりはなれたりして、それから就職活動してなんとなく結婚して」みたいなの。金太郎飴みたいだった。
小学生の時にパソコン好きだったわたくしはずいぶん迫害されたと思います。ぶっちゃけ。反動で中学高校でロックとパンクに走り、学校のいわゆるイケてる層とも先生方とも全くうまくいかず、居場所がまじでなかった。バンド仲間の男女とその周辺のイカれた大人男女の方々(ずいぶん変な人らでした。大好きだった。)の間くらいにしか居場所がなかった。
でもそのあと、あの氷河期のとき、自分にはちゃんと椅子があったんですよね。パソコン、IT、医療、あとバンド仲間のおかげでMac触れたおかげで。IT業界は黎明期だったからほんとたくさん椅子があった。ぜんぜん空いてたよ。そしていまはその椅子がずいぶん立派な椅子になってる。
だから、あのとき椅子がなかった人らには気の毒だなあと思う気持ちとともに、でもお前らは俺の思春期の椅子をずいぶん奪ったよな?っていう気持ちがある。
椅子はなかったんじゃなくて、そういう偏見のせいで見えてなかっただけじゃないの?ってすごく思う。正直なところ。それは君たちのミスなんじゃないの?
んで、最近になって、なんかやたら目立つんですよね。「今の若い奴はずるい」みたいな言い分。馬鹿でもいい大学いけて、いい企業に椅子があってずるいみたいな言い分。氷河期世代でうまくいかなかった人たちが言ってるの。あれなんかすごく嫌だ。
どの時代だって、きついことあるし、恵まれてることあるよそんなん。何の解決にもならなくない?一生言い続けるの?「あんな時代に生まれたからしょうがない。こんな境遇なのもしょうがない」って。若い奴がいうならまだわかるよ?もう40も後半になってまだいってんのそんなこと?
うちのじいさんなんて、生家がすごい裕福で大学までいったのに(当時進学率は2%でした)戦争のせいで士官にされて帰ってきたら妹以外みんな戦死と焼死ですよ。財産もみんな焼けてたそうです。それでも時代のせいとかにしてあーだこうだとか死ぬまで言いませんでしたけどね。毎日楽しそうに暮らしてた。
なんか、氷河期サバイバー(氷河期世代だけどうまくいったひとたち)は同じ氷河期世代の貧困層にずいぶん厳しいみたいな話あるんだけど、似たような背景じゃないかなと思うんですよね。あの時代にITのスキルあった人って自分もそうだけどずいぶん嫌なこと言われて育ったんじゃないかな。周りに。そりゃ冷たくもなるでしょ。
でもまあ、彼らの視点からしたら「世の中が想定してたイケてる勢」にがんばってがんばって合わせてきたのに、社会に出る土壇場に裏切られた!!!!ってなるのかなあ・・・・。
それはそれで気の毒ともいえるのかな。まあでも、どうだろうなあ・・・。
とりとめもない感じになっちゃったな。でもほんと思うんだよなあ・・・。同世代だけに、若い奴僻んであーだこうだとか、無差別殺人して犯罪者予備軍扱いされたりとかまじでちょっとほんと・・・。
がんばろう。ほんとに。まだ人生半分近くあるんだしさ。
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